19年10月22

●太平電は修正した上期予想の対通期進捗率が70%超

 火力発電所原子力発電所の補修工事に強みを持つプラント工事大手の太平電業 <1968> は、20年3月期の第1四半期(4-6月)決算と同時に上期業績予想の上方修正を発表し、経常利益を従来の19億円から37億円へ2倍近く引き上げた。火力発電設備などの補修工事が想定より増加することに加え、施工効率の向上やコスト削減も利益を押し上げる。修正した上期予想の通期計画(52億円)に対する進捗率は70%を超えており、業績上振れは濃厚とみられる。今期は期初計画で配当を前期比20円減の60円にする方針としているが、業績上方修正に踏み切れば、配当増額の可能性も高まりそうだ。

オルガノは13年ぶりの最高益“大復活”を視野

 続いて紹介するのは電力や半導体関連向け水処理装置メーカーのオルガノ <6368> 。第1四半期は国内、中国、台湾で電子産業分野を中心とする手持ちの大型工事が順調に進んだうえ、メンテナンスなど利益率の高いソリューションサービスも好調だった。また、コスト削減の進展でプラント部門の採算も改善し、売上高が前年同期比19%増の201億4900万円、経常利益は同55倍の13億6700万円といずれも高変化を遂げた。これを踏まえ、上期の経常利益を従来予想の2.8倍となる43億円に大幅上方修正した。通期計画は65億円を見込むが、上期予想の増額幅(27億5000万円)を考慮すると、07年3月期に記録した最高益74億2800万円を13年ぶりに塗りかえる公算が高い。

●さくらネットは1Q実績だけで対通期進捗率57%に到達

 データセンター大手、さくらインターネット <3778> の第1四半期決算は国立研究機関向け高火力コンピューティングなど専用サーバーサービスが急増したほか、VPS(仮想専用サーバー)やクラウドサービスの利用者増加が継続し、売上高が前年同期比16.4%増の51億2200万円、経常利益は同4.3倍の2億7300万円に膨らんだ。経費や人件費が想定を下回ることを踏まえ、期初段階で減益予想だった上期の経常利益を一転して増益予想に大幅上方修正している。通期計画は据え置いたものの、第1四半期実績だけで通期計画に対する進捗率が57%に到達しており、業績上振れが期待される状況にある。

●関電化の期初予想はネガティブ

 関東電化工業 <4047> は純度の高いフッ素ガスを効率的に生産する技術に優位性を持つ化学薬品メーカー。半導体・液晶用特殊ガスの製造を主力とする。20年3月期は主戦場である半導体と液晶パネルの市況悪化を背景に、経常利益段階で前期比41%の大幅減益を見込む。ただ、同社は6年連続で期中に通期計画を上方修正した実績を持っており、今期も上方修正への期待は大きい。足もとの業績は半導体・液晶用特殊ガスの販売が落ち込む一方、電気自動車(EV)など車載向けの需要が本格化しているリチウムイオン電池材料が好調だ。また、原材料単価や固定費が想定を下回る水準で推移しており、第1四半期決算発表とあわせて上期予想の大幅上方修正に踏み切っている。同社は底入れ期待が台頭する半導体関連の周辺株としても注目度が高く、株価は下値を切り上げる展開が続く。

●宮地エンジは期中に上方修正する確率9割

 宮地エンジニアリンググループ <3431> も関東電化工業と同様に期初予想を保守的に見積もる傾向が強く、過去10年間のうち、期中に上方修正しなかったのは16年3月期の1回のみだ。20年3月期は前期に利益を稼ぎ出した好採算の大型工事がなくなり、経常利益ベースで前期比2割減少する見通しであるが、上方修正する確率9割の実績を踏まえると、今期も通期計画を増額する可能性があるとみて良さそうだ。指標面では予想PER5.5倍、PBR0.5倍、配当利回り3.4%と割安感が強く、株価の水準訂正余地は大きい。また、政府が国土強靭化政策を進めるなか、橋梁大手の同社はインフラ整備でチャンスを捉える公算が高く、今後の活躍が期待されている。

インフォコムは「めちゃコミック」高成長

 インフォコム <4348> は電子書籍市場の拡大を背景に、子会社アムタスが運営する国内最大級の電子コミックストア「めちゃコミック」の高成長が続いている。第1四半期決算では広告強化などが奏功し、電子コミック配信サービスの売上高は前年同期を3割も上回った。また、電子書籍と並んで注力分野に掲げるヘルスケア事業では、病院向け就業管理システムの販売が増勢だ。業績好調に伴い、上期経常利益予想を14%上方修正したが、通期計画は据え置いた。海賊版サイトの閉鎖も追い風に勢いに乗っている電子コミック部門の更なる成長加速に期待したい。

●タカギセイコーは10月下旬に注目

 工業用プラスチック成形品やプラスチック成形用金型の製造を手掛けるタカギセイコー <4242> [JQ]は第1四半期決算発表と同時に、上期の経常利益予想を従来の4億8000万円から7億円(前年同期比9%増)へ大幅上方修正した。国内で主力の自動車用部品、海外ではOA(その他)分野の受注が想定より伸びる。また、原価低減が進むことも利益上振れの要因となる。同社は前期まで4年連続で10月下旬に通期業績を上方修正した経緯があり、今年も上方修正する可能性は高そうだ。

◇20年3月期経常利益予想の上方修正有力候補

コード 銘柄名    通期計画 上期予想 進捗率<1968> 太平電      5200   3700  71.2<6368> オルガノ     6500   4300  66.2<3778> さくらネット    480    310  64.6<4047> 関電化      5700   3300  57.9<3431> 宮地エンジ    3600   1700  47.2<4348> インフォコム   7800   3300  42.3<4242> タカギセイコ   2110    700  33.2